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コロナ禍の先に描く県発展のビジョン

大きなポテンシャルを活かし「世界から選ばれる福岡県」へ

大きなポテンシャルを活かし「世界から選ばれる福岡県」へ

コロナ禍の先に描く県発展のビジョン

大きなポテンシャルを活かし「世界から選ばれる福岡県」へ

福岡県知事 服部 誠太郎

※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


今年4月、それまでの副知事の立場から新たに福岡県知事に就任し、病気療養のため退任した前知事から県政を継承した服部氏。新型コロナウイルスの感染拡大の収束への道筋がいまだ見通せないなか、この危機をいかに乗り越え、同県を発展へと導くのか。きわめて難しいかじ取りに、その手腕が問われることになる。副知事時代の経験を活かし、コロナ禍収束後を見すえて描く県政ビジョンとは、いかなるものか。同氏に話を聞いた。 (インタビューは令和3年7月14日に行いました)

県が進むべき方向を、県民や市町村へ明確に示す

―今年4月、コロナ禍による混乱のなかでの就任となりました。どのような使命感をもって、知事就任を決意したのですか。

 前知事が体調悪化で残念ながら辞職されたのですが、新型コロナウイルス感染拡大への対応をはじめ、県政に空白や停滞は許されない状況でした。

 そうしたなかでの知事就任でしたから、まずはコロナ禍を乗り越え、県民のみなさまが安心して生活できる社会を取り戻すことが、私に課せられた最大の使命であると認識しています。

 同時に、平成29年の九州北部豪雨以来、本県は4年連続で大雨による被害を受けています。これらの災害からの復旧・復興を一刻も早く進めていくことも、喫緊の課題です。九州北部豪雨で申し上げると原形復旧は、河川や道路はおおむね完了しました。ただし、河川の改良復旧などは用地買収も伴いますので5割程度の進捗状況にあり、早急に進めていかなければなりません。

―いずれも「危機管理」にまつわる課題ですが、ここでは知事のリーダーシップが求められます。

 私は副知事を9年半務めてきましたが、最後の決定をするという責任の重さは、これまでとはまったく異なるものだと思います。決断をし、県が進むべき方向を県民のみなさまや市町村へ明確に示すことが、知事に求められるリーダーシップだと考えています。また、実際の政策推進を考えれば、住民にもっとも近い存在である市町村との協調や連携が不可欠です。

―福岡県には北九州市、福岡市という2つの政令指定都市があり、重要な連携相手になりますね。

 政令市と都道府県が足並みを揃えることの難しさは、全国各地で指摘されるところです。こうした問題は払拭しなくてはいけないと考え、私は当選後直ちに北九州市、福岡市の両市長にお会いし、今後の連携・協力を確認しました。

 「住民の福祉の実現」という目標は県も政令市も同じですから、協力できないわけがありません。トップ同士が日常的に必要に応じて率直な意見交換を行うことで、職員レベルでも同じ方向を向いて仕事がやりやすくなります。政令市に限らず、そのほかの市町村長ともコミュニケーションを図り、「チーム」として県民のために仕事を進めていきたいと考えています。

新しい時代の県政に向けた、3つの挑戦

―服部知事が示す「進むべき方向」とは、どのようなものでしょう。

 基本は、県民のみなさまが住み慣れたところで働き、長く元気に暮らし、子どもを安心して産み育てることができること。これは「地方創生」の基本的な考え方ですが、そうした当たり前のことが、当たり前にできる地域をつくっていくことが大切だと思います。これをベースにして、私は新しい時代の県政を進めるにあたり、3つのことに挑戦したいと考えています。

―具体的に教えてください。

 1つ目は「次代を担う『人財』の育成」です。第4次産業革命やSociety 5.0の到来が言われる現在、産業の発展や生活の改善を実現するさまざまな先進技術が発達しています。ただ、それらを使って世の中を変えていく、支えていくのは、やはり人間です。人が宝、その意味で私は「人財」と呼んでいます。

 「人財の育成」には、大きく2つあり、1つは夢に向かってチャレンジする青少年たちへの応援です。そのため、まずは地域間格差が生まれないよう、ICTをはじめ充実した教育環境を各地域に整えていきます。そのうえで、それぞれのやりたいこと、目指したい道へのチャレンジを応援していきたい。もう1つは、本県を支え発展させていく産業、スポーツ、文化芸術などの分野での人財育成です。たとえば、中小企業では経営や事業内容を熟知しDXにも取り組める人財、農業ではスマート農業機械を導入し、企業的な経営を行える人財などの育成も急務だと考えています。

世界から選ばれ、「One Health」の先進地に

―2つ目はなんでしょう。

 「世界と勝負し、世界から選ばれる福岡県」の実現です。

 本県は500万人以上の人口を抱え、充実した交通インフラやアジアに近い地の利、さらには優れた技術をもつ企業や豊富な人財、魅力的な農林水産物などに恵まれています。こうした大きな優位性、大きなポテンシャルを活かし、輸出を拡大し、国内外の企業を誘致するとともに、観光誘客、国際金融都市づくりなどの取り組みを強力に進める。その先に、「世界から選ばれる福岡県」を実現していきます。

 そして、最後が「One Health(以下、ワンヘルス)の推進」。新型コロナウイルスのほか、SARSなどの新興感染症の多くは人獣共通感染症です。これらのリスクに対抗していくためには、「人と動物の健康、そして環境の健全性はひとつ」というワンヘルスの取り組みは一層重要になります。今後は、この理念を実践する拠点を整備し、ワンヘルスの世界的な先進地となることを目指します。

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福岡県がリーダー県となり、九州が日本の発展を支える

―コロナ禍の収束後には、福岡県のポテンシャルが発揮されると。

 本県が発展するためには、九州全体が発展することが必要であり、それをけん引することが、本県に求められている役割だと考えています。九州・山口各県と経済団体で構成する「九州地域戦略会議」では、「九州はひとつ」を象徴する「九州ロゴマーク」を作成し、九州が連携するさまざまな分野で活用することで、九州のブランド力向上を図っています。これからは、九州が日本の発展を支えていくと思います。その九州のリーダー県として、福岡県をさらに飛躍、発展させ、県民のみなさま誰もが安心してたくさんの笑顔で暮らせる県にしていきたいと考えています。

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服部 誠太郎 (はっとり せいたろう) プロフィール
昭和29年9月、福岡県生まれ。昭和52年に中央大学法学部を卒業後、福岡県庁に入庁。福岡農林事務所、土木部河川課などで勤務。その後、総務部私学学事振興局学事課長、総務部財政課長、総務部次長、福祉労働部長を歴任。平成23年に副知事に就任。令和3年4月に福岡県知事選挙に初当選。
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