東京都品川区の取り組み
戸籍窓口業務の効率化
AIを活用した検索ツールの導入で、戸籍届書の処理時間を大幅に削減
品川区 地域振興部 戸籍住民課 課長補佐 戸籍届出係長 兼 ワクチン接種証明担当 澤 龍
※下記は自治体通信 Vol.45(2022年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体における窓口業務のなかでも、特に戸籍に関する業務はさまざまな法令や規則、届出事例に照らして審査および判断をしなければならない。そのために必要な情報を、大量にある紙の資料から探すケースが多く、そのことが職員の大きな負担となっている。そうしたなか、資料探しにAIを活用した検索ツールを導入したのが品川区(東京都)である。導入の経緯やその効果について、戸籍住民課の澤氏に聞いた。
[品川区] ■人口:40万4,342人(令和4年11月1日現在) ■世帯数:22万8,913世帯(令和4年11月1日現在) ■予算規模:2,623億6,429万3,000円(令和4年度当初) ■面積:22.84km2 ■概要:東京都の南東部に位置。古くから交通の要衝として栄え、区内には鉄道14路線、のべ40もの駅がある。明治時代に官営品川硝子製造所が設立されるなど、京浜工業地帯の発祥地として発展。近年は、再開発により新しい街がつくられ、産業や文化の伝統を守るとともに、情報発信都市としての顔を持つ。
必要な情報を探すことに、多くの時間を費やしていた
―品川区では、戸籍届書を処理する際に必要な情報をどのように探していたのでしょう。
執務室にある大量の紙の資料から、必要な情報が載っていると思われる箇所にあたりをつけ、一つひとつ確認していました。戸籍に関する手続きの審査や判断に必要な法令や規則、届出事例は多岐にわたるため、経験や知識が十分でない新人職員は資料探しに多くの時間を費やします。そして、先輩職員はそのフォローに追われるのです。特に当区の戸籍窓口業務では、外国籍をもつ住民の婚姻など、複雑な処理を要する届書が1日に数件はあるため、職員の負担は大きくなっていました。なんとか資料探しを効率化したいと考えていた折に、展示会で富士通Japanの『MICJET 電子書籍AI検索サービス 戸籍』を知り、興味をもちました。
―どのような点に興味をもったのですか。
戸籍届書の処理に必要となる諸情報が事前にデジタル化されており、必要な情報を手軽に検索できる点です。システムにキーワードやフレーズを入力すると、必要な情報の候補をピンポイントでAIが探して数秒で提示します。また、完全一致だけでなく、類義語も考慮して検索するうえ、使えば使うほど検索精度が高くなります。そういったAIが実装されているからこその機能に魅力を感じ、その場で実証実験を打診しました。
―実証実験の内容について教えてください。
戸籍届書の処理に関して、従来の方法による情報探しにかかる標準的な時間と、『MICJET 電子書籍AI検索サービス 戸籍』を用いた場合にかかる時間を比較しました。若手職員である倉持と辻田の2人が中心となり、令和2年11月から5ヵ月にわたって実施しました。その結果、毎月の処理件数を150件と想定すると、年間約450時間を削減できるという試算結果が出ました。そこで、今年8月から正式に導入したのです。
新人職員でも高いレベルで、情報を探せるように
―実際に活用してみた感想はいかがでしたか。
検索の速さに加え、精度の高さも実感しました。新人職員でも先輩社員と同じような速さと精度で資料探しができるようになったのです。また、資料を持ち運ぶ手間を省けるだけでなく、紙の資料を大量に保管する必要がなくなり、執務室の省スペース化にもつながりました。今後は、業務効率化だけでなく、戸籍情報システム*1の見直しによる運用経費の削減といったコスト面も含め、戸籍事務の改革をより一層進めていきます。
支援企業の視点
機械学習するシステムなら、高い精度で必要な情報を提示できる
富士通Japan株式会社 行政ソリューション開発本部 住民情報ソリューション事業部
第四ソリューション部 マネージャー 高澤 圭介
―戸籍窓口業務に課題を抱える自治体は多いのでしょうか。
非常に多いです。渉外関係や過去に事例のない戸籍届書の処理には、法令や規則、届出事例に関する高度な知識と経験が必要です。一方で、短期かつ定期的な人事異動があることなどから、「資料探しに苦労している」とよく聞きます。そうした課題を解決するため、当社は必要な資料をデジタル化し、検索できる『MICJET 電子書籍AI検索サービス 戸籍』を開発しました。
―どういった特徴があるのでしょう。
検索をサポートするAIを実装している点です。たとえば、検索結果を基にした機械学習をAIが行うので、検索を繰り返すごとに、より妥当性の高い資料データを検索結果の上位に表示するようになります。そのほか、索引による検索や付箋機能など、使用者目線の機能が充実しています。またSaaS型のため、導入してすぐに利用可能で、つねに最新の資料データと機能を更新して使えます。加えて、ほかのシステムとの連携は不要なので、どのシステムを利用している自治体でも導入できます。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
収蔵資料データの拡充を進めるとともに、現場の声を反映した機能拡充に努めます。また、当社が約60年にわたり自治体業務全般にかかわってきた知見を活かし、当検索サービスをほかの業務に広げることも検討しています。たとえば、税業務など、頻繁に資料を探す必要がある業務です。まずは気軽にお問い合わせください。
高澤 圭介 (たかさわ けいすけ) プロフィール
平成17年、株式会社富士通新潟システムズ(令和3年4月1日に富士通Japan株式会社に統合)に入社。戸籍や介護保険、証明書交付の導入、保守などを経験し、現在、戸籍業務ソリューションを担当。
富士通Japan株式会社
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