栃木県日光市の取り組み
動画を活用したプロモーション①
「SAS」というテレビCMを活用し、限られた予算で効果的なPRを実現
日光市 観光経済部 観光課 観光交流推進係 副主幹 篠原 義典
※下記は自治体通信 Vol.45(2022年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
観光産業の振興やふるさと納税の獲得に向けて、動画を活用したPR活動を展開する自治体が増えてきている。そうしたなか、日光市(栃木県)は、従来のPRコンセプトを一新。それに基づく動画を制作し、「Smart Ad Sales(スマート アド セールス・以下、SAS)」というテレビCMの出稿方法を活用したという。同市観光経済部の篠原氏に、取り組みの詳細やその効果を聞いた。
[日光市] ■人口:7万7,857人(令和4年11月1日現在) ■世帯数:3万6,523世帯(令和4年11月1日現在) ■予算規模:603億5,479万2,000円(令和4年度当初) ■面積:1,449.83km2 ■概要:平成18年3月に、旧今市市、旧日光市、旧藤原町、旧足尾町、旧栗山村の2市2町1村の合併により誕生。栃木県の北西部に位置し、北は福島県、西は群馬県に接する。豊かな自然環境や、貴重な歴史的・文化的遺産、豊富な温泉など、恵まれた観光資源を基盤として発展してきた。
20代~30代半ばを意識して、動画を軸にPR活動を展開
―従来のPRコンセプトを一新した理由はなんでしょう。
コロナ禍によって観光産業が低迷したことをきっかけに、市全体のブランディングを改めて行おうと考えたのです。当市には、日光東照宮や華厳の滝だけでなく、中禅寺湖の「しぶき氷」や、幻想的な雰囲気の滝尾神社など、魅力的な場所が多くあります。そういった県外の人たちにとって目新しい魅力を発信して、観光産業を復興するべく、令和3年6月に始めたのが、「NEW DAY, NEW LIGHT. 日光」というPR活動です。新たなファン層を開拓するために、これまでは強く意識してこなかった20代~30代半ばの男女、F1・M1層をメインターゲットにしました。
―どのようなPR活動を行ったのかを具体的に教えてください。
動画を活用した情報発信を軸にプロモーションを展開しました。F1・M1層の多くは、動画を中心とした情報の発信と収集を行っています。そこで、動画によるアプローチを行えば、当市の魅力がより伝わると考えたのです。
まず、「日光のイメージを刷新していく」という想いを込めた60秒のブランディングムービーを制作。加えて、観光資源をストーリーやテーマごとにまとめた、15秒の動画を計10本つくりました。そして、YouTube広告や交通広告、テレビCMなどを通じて、それらを配信したのです。その計画段階で、テレビCMの効果的な活用法を模索していたときに、広告会社から提案されたのが「SAS」でした。
―SASとは、どういったサービスなのですか。
従来の出稿方法である「レギュラータイム」や「スポット」と異なり、テレビCMの出稿枠を1つずつピンポイントで選べるサービスです。レギュラータイムは「出稿する番組を選べるが、契約期間が長いため視聴者が多い番組は価格が高く、十分な回数を放送できないのではないか」、スポットは「価格が低めの設定でも、どの番組で、いつ放送されるのかわからないので、CM効果が不安」という懸念がありました。SASなら出稿枠を確実に選べるうえに低予算から利用できるため、出稿メディアのひとつとして活用を決めたのです。
費用や効果を予測しやすく、納得感のある予算執行が可能
―実際、どのようにしてSASを活用したのでしょう。
まずは、今回の目的である観光誘致に高い相乗効果が見込める旅行番組に、ピンポイントで出稿することにしました。次に、制作した動画を好む、感度が高いF1・M1層の視聴が多いと考えられる番組も出稿先に加えました。さらに、視聴者数は多いけれど価格が高い枠と、価格が低くて視聴者数は少ないけれどCMに興味をもつ人の割合が多そうな枠を組み合わせて、放送回数の増加を図ったのです。限られた予算で、当初の想定を大きく上回る計18回ものCMを放送できたのは、出稿枠を1つずつ選べるうえに、すべての価格が明示されているSASだからこそでしたね。
―SASを実際に活用してみた感想を聞かせてください。
価格や出稿時期が明確なため、予算執行の説明に納得感を得やすく、市民にCMが放送される番組などを事前に周知できました。また、効果についても、SNS上で「すごくよかった」「かっこいい」といった、CMについてのポジティブな投稿が見られるなど、手応えを感じています。今後も、さまざまなメディアを活用して、日光の新しいイメージを発信していきます。
支援企業の視点
動画を活用したプロモーション②
目的に沿った枠を狙い撃ちできる、「第三のテレビCM」を活用せよ
株式会社ビデオリサーチ
企画推進ユニット DXマーケティング 推進グループ プロデューサー 大杉 盛彦
企画推進ユニット エグゼクティブフェロー 木塚 了敬
ここまでは、日光市における動画を活用したPR活動を紹介した。ここからは、同市が活用した「SAS」の出稿枠を検索し、出稿依頼できるサービスを提供しているビデオリサーチを取材。同社の担当者2人に、SASの特徴やその効果的な活用方法などについて聞いた。
SASの年間取引額は、前年比約3.8倍にまで増加
―自治体が動画を活用した効果的なPR活動を行うには、どうしたらいいのでしょう。
大杉 メディアごとの特徴を的確に捉えて、目的や予算に応じて使い分けることが重要です。たとえば、ホームページへの掲載は、費用も手間も抑えられますが、掲載ページへの誘導が難しいです。Web動画広告への出稿は、CPM*1が明確ですが、再生回数を増やすのに時間がかかることもあります。いずれのメディアにも一長一短があるといえるでしょう。
木塚 拡散力に秀でたテレビCMにも出稿方法ごとに一長一短はあります。従来のテレビCMは、「レギュラータイム」と「スポット」という2つの出稿方法があり、レギュラータイムは出稿する番組を選べますが、契約期間に応じた投資が必要です。一方のスポットは、予算に応じて利用できますが、出稿する番組を選べません。そうしたなか、「第三のテレビCM」として、注目を集めているのが、15秒のCM枠を1枠からピンポイントで購入できるSASです。近年、多様化する広告ニーズに対応するべく、放送局が平成30年に提供を開始。徐々に出稿数が増え、SASの取引総額は、令和3年度に前年比約3.8倍まで拡大しています。
―SASの特徴について、詳しく教えてください。
大杉 放送日時や価格が明確で、PRしたい内容に関連した番組のCM枠への出稿が可能です。価格の幅も広く、東京のキー局でも5万円から出稿できます。出稿枠ごとのCPMを割り出せるので、ほかの広告媒体も含めてCPMを比較したうえで、出稿枠を選ぶことも可能です。デジタル広告と比べて、CM視聴者を一気に増やせるというテレビCM本来の強みもあるので、イベントなど期間限定の取り組みを告知する際にも有用です。
ただ、自由度が高いからこそ、出稿目的に合わせた細かな戦略が必要になります。そこで、SASの有効活用をサポートするために当社が提供しているのが、『枠ファインダ』というサービスです。
番組内容や視聴者のデータを、出稿枠選びに活用できる
―どんなサービスなのですか。
木塚 オンラインで、番組の内容や視聴者に関するデータ、価格から出稿枠を検索し、出稿を依頼できるサービスです。出稿依頼には放送局との契約が必要ですが、出稿枠の検索はID登録すれば無料で利用できます。令和4年11月現在、データ会社10社ぶんのデータを搭載しており、視聴者の年齢から性別、職業、年収、消費動向、視聴ログまで、さまざまなデータをもとに戦略を練られます。具体的には、放送期間やエリア、予算規模、ターゲットなどを入力して検索すれば、条件に合った番組の一覧が表示されます。そのため、「番組の内容」「視聴者のデータ」「価格」といった3つの視点を組み合わせたテレビCM活用が簡便に行えるのです。日光市がSASで出稿した際も、計画立案に『枠ファインダ』が活用されました。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
大杉 PR方法の選択肢の1つとして、SASを浸透させることで、自治体におけるPR活動に貢献していきたいと考えています。そのためにも、SASの認知度向上の支援に努めていきます。自治体でのSAS利用が増えれば、テレビCM市場全体の活性化にもつながると思います。まずは気軽にお問い合わせください。
大杉 盛彦 (おおすぎ もりひこ) プロフィール
昭和48年、静岡県生まれ。通信、金融、ネットワークメーカーでのマーケティング職を経て、令和4年、株式会社ビデオリサーチに入社。『枠ファインダ』のマーケティングを担当。
木塚 了敬 (きづか としたか) プロフィール
昭和47年、広島県生まれ。新卒で現在の三菱電機ソフトウエア株式会社に入社。ITベンチャーを経て、平成27年、株式会社ビデオリサーチに入社。事業立ち上げや事業提携の推進を担当、令和4年より現職。
株式会社ビデオリサーチ
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