※下記は自治体通信 Vol.56(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。
「答えは現場にある」という信念。その正しさを確信しました
―感謝の言葉を伝えられた経緯を教えてください。
当町は、基幹産業である漁業の振興策として、10年ほど前から「海の6次産業化」に注力しています。令和元年頃から軌道に乗り始めましたが、当初は新たな取り組みへの抵抗感からか、漁師さんの協力がなかなか得られずにいました。そのとき私は、「とにかく現場で漁師さんの声を聞こう」と考えました。漁師さんには私たち職員のことが、「現場を知らずに、口だけは出す存在」と映っているように思ったからです。それからは、可能な限り漁港に顔を出し、漁師さんと積極的にコミュニケーションを取ることで、次第に打ち解けていきました。いつの頃からか、魚の仕分けを手伝ったり一緒に漁船に乗せてもらったりするまでの仲になり、「また来いよ」と言われるようになっていました。その後、「中村さんの言うことなら」と、海の6次産業化を地域に広げる切り札として開設した商業施設「UMIKARA」の運営にも、積極的に協力してくれるようになりました。
―感謝の言葉を、どう受け止めていますか。
私を「仕事仲間として認めてくれた言葉」だと捉えています。当時の私は、漁業のことを知ろうと、とにかく一生懸命でした。魚や漁業にまつわる本を買って勉強もして。そうした私を見て、ベテラン漁師さんは、「いつも足を運んでくれて、ありがとな」という言葉もくれました。私が仕事に向き合う姿勢として大切にしている信念に、「答えは現場にある」というものがあります。地域の課題はなにか、住民はなにに悩んでいるのか。住民から意見が出るのを待つのではなく、まちづくりに携わる私たち職員が自ら足を運び、意見を聞き出すことが大事だと考えています。その信念の正しさに、確信を持てました。
―一連の経験を、今後の業務にどう活かしますか。
地域振興に向けて、まちを知り尽くしている住民のいろんな声をもっと聞きたいです。そのためにも、私は、町が運営する「公営スナック」構想なんて、面白いと思っています。1日の疲れを癒すお酒を酌み交わしながら、地域の老若男女が世代を超えて楽しく集い、「昼の会議室」では聞けない話がたくさん出てくるかもしれませんね。そうした思い切った取り組みをする自治体があっても、いいと思いますよ。
『自治体通信』では、自治体職員のみなさんが住民に感謝されたエピソードを募集しています。
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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部