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先進事例2020.01.16

個別最適化学習はAIを活用したテスト結果分析で促進【自治体(奈良市)の取組事例】

個別最適化学習はAIを活用したテスト結果分析で促進【自治体(奈良市)の取組事例】

奈良県奈良市 の取り組み

個別最適化学習はAIを活用したテスト結果分析で促進【自治体(奈良市)の取組事例】

奈良市長 仲川 げん

子どもの学力向上のため、個々の能力に適した学習や指導の実現が求められている。一方、子どもの習熟度の測定や教員の指導力向上など、実現までの課題は多い。そうしたなか、奈良市(奈良県)は課題の解決にクラウドやAIを活用。テスト結果から設問ごとの理解度といった詳細なデータをえて、きめ細かな指導につなげる取り組みを実施している。取り組みの概要や狙いを、市長の仲川氏に聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.16(2018年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

奈良県奈良市データ

人口: 35万7,488人(平成30年10月1日現在) 世帯数: 16万2,037世帯(平成30年10月1日現在) 予算規模: 2,352億2,210万円(平成30年度当初) 面積: 276.94km² 概要: 和銅3年(西暦710年)に藤原京からこの地に都を遷されて以来、7代の天皇、70余年の間、首都として栄えた。江戸時代には奈良奉行が置かれ、産業の奨励により製墨、奈良晒などが発展した。戦後は日本文化のふるさととして多くの観光客を受け入れるようになり、昭和25年には国際文化観光都市を宣言。また、隣接村との合併や、京阪神のベッドタウンとして市西部や北部に近代的な住宅団地が次々と建設されたことで、人口は急激に増加した。

―就任以来、どのような教育政策を推進してきましたか。

個々の児童に丁寧な指導ができるよう、市長選の公約で掲げていた少人数学級をすべての市立小学校で実現しました。しかし、それだけではきめ細かな指導の実現は難しいことがわかりました。

学力は学びの蓄積ですが、従来はテストの結果を点数化するだけで、過去の学習を振り返ることができる十分なデータをえられないことが課題でした。ベテラン教員も大量退職し、若手教員の指導力向上も求められています。当市は、学習のつまずきや特性を読み取れる詳細なデータをえることで、課題の解決を試みました。民間企業の学習クラウドシステムを活用した、個別最適化学習の事業を平成28年から始めたのです。

―具体的に個別最適化学習について詳しく聞かせてください。

教員がテストの答案をクラウドに送り、AIでデータを分析します。分析結果をもとに児童一人ひとりの習熟度や苦手分野に応じた復習教材が自動で作成され、学校に提供されます。算数を対象教科に、このサイクルを年14回の単元テストと3回の学期末テストごとに実施。現在は市立の小学校全43校の4~5年生で導入しています。

「不自然な正誤答」も可視化

―AIの分析でえられるデータはなにが違うのでしょう。

たとえば、「現代テスト理論(※)」にもとづいた分析で、「不自然な回答」の可能性がわかることです。ある問題を正答しても、同等の難度の問題を多く間違えていれば、「まぐれ正答」の可能性が示される。また、「同じ正答数でも、より難しい問題に正解した児童のほうが潜在的な習熟度が高い」ということもわかります。

従来の採点作業では読み取れなかった正確な習熟度がわかる分析結果により、教員は児童に合ったきめ細かい指導ができるのです。

児童も、復習教材で効率的に自分の強み・弱みを見直せます。自分の能力に合った問題が個別に提供されるため、「学習意欲の向上にもつながっている」との報告が教育現場から届いています。

※現代テスト理論:テストの得点を科学的対象としてあつかう学問分野のひとつ。小問ごとの正誤情報を統計的に処理することで、問題の難易度を客観的に設定し、個人の能力特性を可視化できる

―今後の利活用ビジョンを聞かせてください。

個別最適化学習でえられるデータは、年数をかけて蓄積したいと考えています。

義務教育期間の学びが、進学やキャリア形成にどう影響するか。こうした分析を行い、より充実した行政サービスにつなげるため、データを活用したいですね。

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