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先進事例2016.12.27

【柏市】地域社会福祉にドラムサークルを活用(地域福祉の取組事例)

【柏市】地域社会福祉にドラムサークルを活用(地域福祉の取組事例)

千葉県柏市 の取り組み

【柏市】地域社会福祉にドラムサークルを活用(地域福祉の取組事例)

社会福祉法人 柏市社会福祉協議会 常務理事(兼)事務局長 秋山 享克
社会福祉法人 柏市社会福祉協議会 ボランティアセンター 富樫 智和

柏市社会福祉協議会が「音楽を地域づくりに活かす」という発想で、全国でも珍しい試みをスタートさせた。それが『かしわファシリテーター育成講座』だ。(※)ドラムサークルを活用し、新しいカタチの社会福祉に取り組んでいくという。同協議会・常務理事(兼)事務局長の秋山氏とボランティアセンターの富樫氏に、詳細を聞いた。

※ドラムサークル : 年齢を問わず、音楽経験も必要なく、参加者が輪になって、即興的につくりあげる打楽器(パーカッション)のアンサンブル

※下記は自治体通信 Vol.7(2017年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

千葉県柏市データ

人口: 41万7,579人(平成28年11月1日現在) 世帯数: 17万9,111世帯(平成28年11月1日現在)  予算規模: 2,322億7,700万円(平成28年度当初) 面積: 114.74km² 概要: 千葉県の北西部に位置し、中核市、業務核都市に指定されている。市中央部は東武アーバンパークライン(東武野田線)・JR常磐線、国道6号・国道16号が交差する交通の要衝、市北部は首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスが通り、大学、研究所などが集まっている。プロサッカーJリーグの柏レイソルの本拠地としても有名。

人と地域をつなげていく スペシャリストを発掘・育成

―かしわファシリテーター育成講座』とはどのような取り組みですか。

秋山 端的にいうと、音楽をツールとして人と地域をつなげていくスペシャリストを発掘・育成していこうという試みです。ドラムサークルのファシリテーターは、参加者が緊張やプレッシャーを感じることなく音楽やリズムを楽しめるようにリードして手助けするガイド役。それを柏市民のなかからつのって、増やしていこうと。

富樫 平成28年9月から、計12回にわたって講座を行う予定です。7、8月で説明・体験会を実施したのですが、56名が参加。最終的に定員の25名が受講されています。ボランティア団体や障害者施設の職員、教員などあらゆる分野の方が集まっていて、年齢も20~70代と本当に幅広いですね。

―このような試みを行うことになったきっかけはなんでしょう。

富樫 最初のきっかけは、平成26年に行われた豊四季台地区社協のイベント。東京大学の学生と地元の高齢者との交流にドラムサークルを実施したんです。すると非常に盛り上がり、学生と高齢者の間に会話が生まれたんです。通常ですと世代の違いなどからコミュニケーションをとるのは簡単ではないんですが、それがすぐにできた。後のヒアリングで高齢者の方も「非常に楽しかった」「またやりたい」という意見が多くて。そこで、「これはなにかほかにも活かせるんじゃないか」と。

秋山 そして、次は平成27年末に柏市住民福祉大会のアトラクションとして、参加者400名全員にパーカッションを配って実施したんです。すると、そこでも盛り上がって。音楽を通じてすぐに一体感が生まれ、笑顔でつながっていく。最初と最後で参加者の表情が、ガラっと変わるんです。結果として、音楽がコミュニケーションツールになりえるのを400名に体感いただくことができました。

まずは民間で盛り上がり口コミで広がることを望む

―そこからなぜ、ファシリテーターの育成に結びついたのですか。

秋山 「単発で終わらせず、こうした取り組みを継続して行いたい」とパーカッション400個を購入。無料で貸し出せるようにして、22ある地区社協にも使ってもらおうと考えました。しかし、我々にドラムサークルのノウハウがあるわけではない。そこで、豊四季台イベントのときから協力してもらっていたヤマハミュージックジャパンと相談しながら、音楽を使って地域になにができるかをいろいろ模索。結果、「地域のファシリテーターを育成していこう」という話になったのです。

富樫 講座はまだ序盤を過ぎたところですが、25名が音楽を通じてつながっていくのが目に見えて、笑顔で受講しているのが印象的ですね。さまざまな年齢、分野の人が集まったのも、住民福祉大会や事前の説明・体験会を通じて「これは普段の業務に活かせる」と多くの人に感じてもらえたからだと思います。

―今後、どのような効果を期待していますか。

富樫 やはり、地域づくりのツールとして機能することを期待しています。地域にはさまざまな課題がありますが、紐解いていくと「孤立」というのが大きなキーワードとして浮かび上がってきます。高齢者や障害者、子育て家庭などケースはさまざまですが、閉じこもって出てこないと手を差し伸べるのは難しい。そこで音楽を通じて外に出て行って地域とつながり、楽しんでもらえるようになればと。

秋山 社協だけが「これいいよね」といっても、民間の人が盛り上がらないと意味はありません。そこで育成したファシリテーターが福祉や児童、高齢者、障害者用の各施設でドラムサークルを実施し、それが口コミで広がって町会や自治会まで伝わることを期待しています。行政が指導するより、クチコミのほうがより地域に根づくはずですからね。

住民福祉大会で、会場の人が一体化しているのを見て、「ドラムサークルは老若男女、性別や肩書、年齢、障害のあるなしに関係なくコミュニケ―ションがとりやすいツールとして活用できるのでは」と感じました。

 当市では平成26年度から地域福祉の5ヵ年計画を立てているのですが、その重要施策のなかに「新たな担い手の創出とコーディネート」と明記されています。これまではふるさと協議会や町会、自治会といった既存の支援団体を通じて人材を発掘・育成するのが通常でしたが、それ以外に地域に貢献できる人材が埋もれている可能性があります。『かしわファシリテーター育成講座』でそうした新たな担い手を発掘できればいいなと期待しています。

 そのため、行政としても全面的に支援できるような体制をつくっていきたいと考えています。

すでに平成28年9月から開講されている『かしわファシリテーター育成講座』。今回は10月3日(月)に柏市「いきいきプラザ」で開催された第3回目の講座に密着。豊四季台のイベントから柏市に協力している講師・ペッカーさんや参加者の声も含めてレポートする。

「はい、まず今日は自分のニックネームをリズムに乗ってみんなに紹介していきます~」

 講師・ペッカーさんの声が小気味よく響く。メンバーが立ち上がって大きな輪と小さな輪をつくり、手拍子とリズムにあわせつつ目の前の人にニックネームでの自己紹介をしていく。それが終われば、ひとつ隣にずれてまた自己紹介を繰り返す。いわばフォークダンスのよう。ただし、リズムはサンバだ。最初は恥ずかしがる参加者もいたが、リズムをとるうちにどんどん積極的になっていく。

 アイスブレイクが済んだあとは、パーカッションを使ったドラムサークル。講師であるペッカーさんのレクチャーにあわせながら、各自が思い思いのフィーリングやリズムで柏市社会福祉協議会が提供しているパーカッションを叩き続ける。

 その後は、ペッカーさんがスライドを使い「ドラムサークルとはなにか」「ファシリテーターにはなにが必要か」といったことを理論立てて、ときにはユーモアを交えて解説。参加者もこのときばかりは、リラックスしながらも表情は真剣だ。

 そして最後に再びドラムサークル。ドン、ドコ、ドン、ドコ、ドン、ドコ…。お腹に心地いい振動が響いてくる。ときにやさしく、ときに力強く。「音楽は理屈なしに楽しい」というのが身体で理解できる。ラストに向けて音は徐々に大きくなり、最高潮を迎えて講座は終了。叩き終えた参加者は、みんな楽しそうに充実した笑みを浮かべていた。

 最後にペッカーさんは、期待を込めてこう話してくれた。

「講座も3回目を迎え、みなさん積極的に手をあげて、意見を述べるようになってきました。ゆくゆくは、柏市民のためになろうとする“柏市LOVE”なファシリテーターになってほしいですね」

講座の話を聞いた際「え~、そんなことやるんだ」とすごい興味をもったんです。いざやってみると、楽しみつつも難しいなと実感(笑)。私は「おもちゃ図書館」という障害に関係なく子どもたちが一緒になって遊ぶ子育て支援の活動や市民の方に障害者理解が深まるための活動をやっているので、みんなが一体感をもてるようなツールとして使わせてもらおうと思っています。

音楽は自分にとって未知の世界。ただ、ライブやコンサート会場に行ってみたときに、みんなが一体となるのを感じとれて、それがすごく楽しくて。いい機会だし、内容的にもいまの仕事に活かせるかなと思って参加しました。障害者施設の職員をしているのですが、利用者のなかには自分をうまく表現するのが苦手な方も。それを音楽でお手伝いができればと考えています。

私はサッカーを子どもたちに教えているんです。サッカーはリズムが重要なので、子どもたちにリズム感をつけさせたいという想いで参加しました。想像していたよりとても楽しく、毎回勉強になっています。ドラムサークルを取り入れたら、もっとサッカーを楽しんでもらえるのではと思っています。また、子ども会や老人会にも入っているので、いろいろ活用できそうですね。

私は社協の職員で、福祉教育を担当。学校に出向いて車いすの体験講座や高齢者疑似体験講座を行ったり、地域で福祉教育のボランティアさんを育成する業務があるんです。そのなかで福祉教育のひとつにドラムサークルを取り入れられたらいいかなと。いじめや家庭の問題を抱えている子どもたちがいるなかで、その子が笑顔になれる時間を提供できたらなと思っています。

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