―下関市では教育現場のICT化はどの程度進んでいますか。
文部科学省の指針に沿った整備を進めている最中で、現在、中学校のPC教室では生徒1人に1台、小学校では同じく児童2人に1台のノートPCを整備しています。さらにタブレット端末は数人に1台の割合で導入し、グループ学習が実施できる体制を整えています。
一方、教員には1人1台のPCを各校で整備していますが、教員のICT習熟度には生徒以上に大きな個人差があり、一律にICT化を進めていくのは困難だと感じる場面が少なくありません。
―具体的にどのような課題を感じているのでしょう。
ICT整備が進むにつれ、学校からのトラブル対応の問い合わせが増え続けていることです。ネットワークの不具合や機器の使い方など内容は多岐にわたります。しかも、これらのトラブルは短時間で解決しなければ長く授業に影響してしまうため、迅速な対応が求められます。機器の故障であればメーカーに修理を依頼しますが、原因がわからず対応に困るケースや、なかには教育委員会の担当者を派遣するよう学校から求められるケースも少なくありません。現状、市内全71校の小、中学校に対し、ICT支援担当者は私1人。市町村合併によって市域が大きく広がったことで、遠方の場合、往復だけで半日を要する学校もあり、対応力にはおのずと限界がありました。
―導入するだけではなく、活用段階では現場の支援が重要だ、と。
そのとおりです。私自身、深い専門知識があるわけではなく、現場支援以外の業務も多いです。このままの状態を放置して導入を進めるだけでは、もっとも重要な現場での活用がおろそかになってしまいかねないとの危機感がありました。そこで本市では、教育ICT分野で実績のある民間企業と協定を結び、学校現場のICT利活用促進に向けて取り組むことにしました。
心強い専門家の知識と経験
―どのような支援内容ですか。
ICTにかんする学校からの問い合わせを、専門知識と豊富な経験をもったヘルプデスクが一括して対応してくれるうえ、現地対応が必要な場合も、私になりかわって迅速に学校へ駆けつけ、サポートしてくれています。これにより、各学校からは「電話1本ですぐに対応してくれる専門家の存在は大変心強い」と意見をいただいています。さらに、教育委員会の業務負担が大きく軽減されました。そればかりか、月次報告によって、どのような支援が行われたのかを共有してもらえるので、解決策の知見を蓄積できるうえ、現場の課題やニーズがつぶさに把握でき、今後のICT整備にとって貴重な情報にもなっています。