※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
神奈川県庁の行政文書が蓄積されたハードディスク(以下、HDD)が、データ消去前に転売された問題を受け、総務省は令和元年12月、自治体に向けて情報セキュリティに関する新たな通知を出した。以前から情報セキュリティ対策を行ってきた藤沢市(神奈川県)は、これにいち早く対応。独自の対策を講じている。同市の担当者2人に、これまでの取り組みも含めて聞いた。
藤沢市データ
人口:43万6,477人(令和2年8月1日現在)世帯数:19万3,344世帯(令和2年8月1日現在)予算規模:2,685億6,461万1,000円(令和2年度当初)面積:69.56km²概要:神奈川県の中央南部に位置し、横浜市、鎌倉市、茅ヶ崎市、大和市、綾瀬市、海老名市、寒川町に囲まれ、南は相模湾に面している。JR東海道線で東京エリアまで約50分、横浜エリアまで約20分の位置にあり、交通利便性にも恵まれている良好な居住環境が整っている。また、商工業が集積し、江の島・湘南海岸などの観光資源や教育・文化・福祉・コミュニティ施設などの社会資源も豊富。
総務省の通知で、より厳重な対策が必要に
―藤沢市ではどんな情報セキュリティ対策を行ってきたのですか。
杉山 当市では、セキュリティポリシーとして、「保有する情報資産を事件・事故から守る」というのを命題のひとつにしています。そのため、平成18年から自治体としては珍しく、ISMSの認証を取得。以降、継続して取得しています。
また、当市のシステムや端末の約9割がリース契約ですが、業務委託・賃貸借を問わず、契約の際、これまでも必ず「データの保護及び秘密の保持等に関する仕様書」を添付。「受託者は利用が終わった情報機器に関しては必ずデータを消去する」「データを消去した場合はデータ消去証明書を発行する」ことを定め、実行していました。
有田 さらに、リース以外の庁内から出てくる記憶媒体に関しては、適切に廃棄するための業務委託を毎年行い、年に1度数百キロを廃棄し、「廃棄証明書」を発行してもらっていました。
―今回の通知を受けて、どのような対策を講じたのでしょう。
有田 通知には、重要な情報を含む記憶媒体には、物理的もしくは磁気的に破壊をしてデータ消去を行うこと。また、データ消去の際は職員が立ち会いのもとで行うよう書かれていました。当市の仕様書では、職員の立ち会いおよび庁舎内でデータを消去することまでは明記しておらず、業者が持ち帰って消去した後、証明書を発行してもらっていたのです。それは正しいフローですが、通知にはそぐわない。また契約中の案件は、作業場所を庁内に変更することは、契約金額にも関係するため対応が困難だ、と。そこで今後は、庁内で職員自らがデータ消去を行える環境整備が必要になったのです。
あらゆる状況を想定して、庁内の環境を整えていく
―どう対応したのですか。
杉山 重要な情報を含む記憶媒体に関して、まずは磁気破壊装置の導入検討を開始。じつは、15年以上前から磁気破壊装置は保有していたんです。ただ、最新のHDDには対応できず、更新を検討していました。磁気破壊装置なら、職員も使い慣れていることもあり、これを機に刷新しようと。
ポイントは、HDDを取り出さずにノートパソコンごと磁気的破壊ができること。そのほうが、職員も使いやすいですから。その基準を満たしていたのが、アドバンスデザインの磁気破壊装置でした。また同製品は、消去ログが残るので、どの項目を消去できたかがわかり、作業モレを防ぐことも可能。それで、導入を決めました。
―情報セキュリティに関する今後の方針を教えてください。
有田 情報流出防止策を強化していきます。実際に、重要情報を含まない前提ですが、磁気的破壊ができないリース契約の記憶媒体にはデータ消去ソフトを使い、当市でデータを一度消去。そのうえで、さらに業者に消去を依頼しています。業者まかせにせず、自前の防衛が求められているからこその対応です。これも、アドバンスデザインの製品を活用しています。
また、あらゆる記憶媒体に対応できるよう、物理破壊装置の検討も行っていきます。情報資産を守るため、職員のセキュリティ教育も含めて徹底していきたいですね。