熊本県宇城市の取り組み
通信ネットワークの管理
機器の接続状況を視覚的に把握し、管理上のムダを発見できた
宇城市
企画部 情報統計課 課長(情報政策係長兼務) 蛇嶋 文博
企画部 情報統計課 情報政策係 主任主事 牧野 朝日
※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
多くの自治体では、新たな行政サービスの追加や組織再編、庁舎移転などに伴い、通信ネットワーク(以下、ネットワーク)の構成変更が繰り返されている。こうしたなか、宇城市(熊本県)は、ネットワーク管理の強化を目的に、機器との接続状況を可視化する実証実験を行っている。実験の狙いと、そこで得られた成果について、情報統計課の2人に聞いた。
[宇城市] ■人口:5万8,102人(令和3年7月31日現在) ■世帯数:2万4,830世帯(令和3年7月31日現在) ■予算規模:507億1,772万1,000円(令和3年度当初)■面積:188.61km2 ■概要:熊本県のほぼ中央部に位置し、九州自動車道や国道3号線、JR鹿児島本線が市の南北を貫くなど県内交通の要衝としての役割を果たす。平成17年に5町(三角町、不知火町、松橋町、小川町、豊野町)の合併により誕生。平野部にはのどかな田園風景が広がり、不知火海・有明海に囲まれた海岸沿いも美しい。温暖な気候を活かした果樹栽培が盛ん。
アクセスポイントが、必要以上に設置されていた
―ネットワークの管理にどのような課題を感じていたのですか。
蛇嶋 多くの機器で構成されるネットワークの現状を、把握できていないことに課題を感じていました。ネットワーク構成の変更や新たな機器の調達が繰り返されるなか、庁内で保有する機器やその台数が妥当であるかを判断するのは難しく、ムダな管理コストが生じているのではないかと問題意識をもっていたのです。そこで、まずはネットワークの現状を把握し、IT資産にかかる管理コストのムダを浮き彫りにしようと考えました。
―具体的に、どのように課題の解決を図ったのでしょう。
蛇嶋 専門誌や展示会で情報収集を行いました。ネットワークの管理を目的としたソリューションは少ないのですが、そうしたなかで、アラクサラネットワークスが提供する『AX-Network-Manager(以下、AX-NM)』を知りました。これは、ソフトウェアをサーバにインストールするだけで、どういった機器がどのようにつながっているかを可視化できるものです。当市のニーズに合致することから、『AX-NM』を使った実証実験を今年の春に始めました。
―実験の成果はいかがでしたか。
牧野 機器の接続関係を表す「トポロジーマップ」を簡単に作成でき、ネットワークの全貌を視覚的に把握できました。電源が入っていても実際に使われていない機器の実態がわかり、ムダな管理コストの削減に役立ちました。また、無線アクセスポイントやハブに接続している端末の数もわかるため、端末の配置に対して無線アクセスポイントやハブが必要以上に設置されている現状にも気づけました。こうした機器の適正な設置台数や設置場所も検討できるので、今後の調達にも活かせそうです。
蛇嶋 今回の成果から、『AX-NM』はトラブル発生時の対応の改善にもつながると期待しています。
出先機関のトラブルも、遠隔で状況を確認できる
―それはなぜですか。
蛇嶋 『AX-NM』は出先機関の状況も可視化できるので、トラブルの発生時に、端末が故障しているのか、ネットワーク上に不具合があるのかといった状況を遠隔で簡単に把握できるからです。従来は、トラブルの原因究明のために本庁舎の職員や事業者が現場に赴く必要がありましたが、遠隔で状況を確認できれば、対応策を事前に絞り込み、より効率的に対処できるでしょう。
―ネットワーク管理をめぐる今後の方針を聞かせてください。
牧野 以前はネットワークの管理が十分でないという悩みがありましたが、『AX-NM』を活用すれば、特別に意識せずともネットワークの管理ができると感じています。実際、ネットワークの変更が生じても人手で管理台帳を更新する必要はありません。職員の異動の際もネットワーク管理に関する業務の引き継ぎが容易になるでしょう。実証実験を通じ、『AX-NM』の本格導入を検討したいですね。
支援企業の視点
ネットワークを可視化してこそ、個々の機器は効率的に管理できる
アラクサラネットワークス株式会社 第一エンタープライズビジネス部 主任 鈴田 伊知郎
―自治体におけるネットワーク管理の現状を教えてください。
情報システムを効率的に運用するには機器やネットワークの管理が重要ですが、実際には職員だけでなく、委託事業者も現状を把握できていないケースが少なくありません。このため、組織再編やフロアのレイアウト変更のたびに人手をかけて現場を確認したり、スイッチやアクセスポイントといった機器を必要以上に保有したりするムダが生じています。また、トラブル発生時の原因究明に余計な時間がかかることもあります。
―ネットワークを管理するポイントはなんですか。
庁内ネットワークを構成する機器の保有台数だけでなく、その使用状況まで把握することです。たとえば、当社が提供する『AX-NM』では、ネットワーク構成の全体像を捉えることで、機器の接続状況や使用状況を可視化でき、IT資産の管理や、ネットワーク構成の変更履歴の管理、トラブル発生時の効率的な対処につなげられます。さらに、庁内ネットワークに接続されている端末の数や種類、接続位置がわかるため、不正端末の接続対策にも役立てられます。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
自治体のマンパワー不足が深刻化するなかでも、情報政策部門が管理するIT環境は今後ますます高度化していくとみられます。こうしたなか、当社はIT機器やネットワークの管理を簡単にするお手伝いを通じ、職員の業務負担軽減を支援していきます。関心のある自治体の方は、お気軽にご連絡ください。
鈴田 伊知郎 (すずた いちろう) プロフィール
熊本県生まれ。大学の教員やシステム管理者を経て、平成18年、アラクサラネットワークス株式会社に入社。九州エリアを中心に、公共分野をはじめ、文教・医療分野への営業活動に従事。
アラクサラネットワークス株式会社