神奈川県藤沢市の取り組み
公金収納手続きのWeb化
市民目線による納付方法の多様化を、公金徴収率向上につなげる
藤沢市
納税課 新たな納付環境導入プロジェクトチーム 口座振替検討グループリーダー 卯瀧 直也
学校給食課 新たな納付環境導入プロジェクトチーム 口座振替検討グループサブリーダー 市川 ありさ
※下記は自治体通信 Vol.37(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
DX推進が多くの自治体で課題となるなか、窓口を介した紙ベースの行政手続きの変革が急がれている。「自治体業務の効率化」と「住民サービスの向上」を同時に実現できる公金収納業務は、その代表的な取り組みのひとつとなる。たとえば、藤沢市(神奈川県)では、Web上で手続きが完結する新たな公金収納の仕組みを導入したという。導入の経緯と効果について、同市担当者に話を聞いた。
[藤沢市] ■人口:44万1,500人(令和4年3月1日現在) ■世帯数:19万7,795世帯(令和4年3月1日現在) ■予算規模:2,861億3,584万3,000円(令和4年度当初案) ■面積:69.56km2 ■概要:神奈川県の中央南部に位置し、南は相模湾に面する。別荘地や避暑地として発展してきた歴史があり、戦後は鉄道網が整備されたことで東京や横浜のベッドタウンとして人気が高まった。江の島、湘南海岸など多くの観光客が訪れる観光都市としての性格も併せ持つ。
納付率の向上へ、課題は口座振替の利便性改善
―藤沢市ではこれまで、公金収納業務をめぐりどのような取り組みを行ってきたのですか。
卯瀧 納付率の維持・向上のため、多様化する市民のライフスタイルに合わせた納付環境の実現に努めてきました。具体的には、従来の口座振替やコンビニ納付以外に、PayPayやLINE Payといったコード納付への対応、さらには口座振替の利便性改善をテーマに議論を進めてきました。
市川 口座振替の利便性をめぐっては、公金収納の代表的な例である小学校給食費などで、毎年いくつも課題が浮上していた経緯があります。従来の複写式用紙による申請は、そもそも市民が日中に金融機関へ出向かなければならない不便もあったうえ、誤記載による手戻りやその後の再申請には最終的に数ヵ月を要します。これが誤納付の原因ともなり、事務処理の煩雑化を招くため、申請受付の迅速化も課題となっていました。
―それらの課題に、どういった対応をしたのでしょう。
卯瀧 当市では、「新たな納付環境導入プロジェクトチーム」を発足させ、これまでにない仕組みの導入を検討しました。具体的には、Webなどを介した3つの公金収納サービスを対象に、納税課をはじめ庁内の関係8課の意見を集約し、比較検討しました。その結果、ヤマトシステム開発の「公金収納支援サービス」を選定し、令和3年1月からの運用開始を決めたのです。
―選定の理由はなんですか。
卯瀧 導入の条件として、当市の重視点は、いつでもどこでも納付できることと、納付方法や申請方法が簡単であること。これに対して、「公金収納支援サービス」では、印鑑不要のため利用者がスマートフォンやタブレット端末を使ってWeb上で24時間365日、口座振替契約手続きが行えます。手続きが即座に完了し、誤記載による手戻りも防げ、処理手続きの迅速化や処理負担の軽減にも寄与すると判断しました。さらに、個人情報保護の観点から、申請情報を非公開系のLGWANネットワークで管理できる点も評価しました。
「藤沢市は便利になった」と、市民からの声も
―導入効果はいかがですか。
市川 神奈川県内では初めての取り組みだったこともあり、利用者からは「藤沢市は便利になった」との声が届いています。電子化により、正しい口座情報の審査・登録が迅速にできるようになったことで、市職員の事務処理負担の軽減にもつながっています。
卯瀧 今後、市として振替口座の解約手続きについてもWeb上で行えるように検討を進めることで、さらに市民の利便性を高め、徴収率の向上につなげていきたいと考えています。
支援企業の視点
口座振替登録のWeb化。システム選定では2つの視点が重要
ヤマトシステム開発株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション事業部 長田 早紀
―公金収納において口座振替登録のWeb化を進める自治体は増えていますか。
住民の利便性向上や職員の業務効率化といった目的にくわえ、昨今のコロナ禍による新しい生活様式への対応という観点からも、最近は急速に増えている印象です。当社の公金収納支援サービスの導入自治体数も、この2年で3倍以上に増えています。
―Web化にあたって、重要なポイントはなんでしょう。
導入システムの選定に際して、「マルチバンク対応」と「情報セキュリティ対策」がポイントでしょう。前者については、連携する金融機関の数が利便性に直結するため重要です。これに対して、当社サービスは現在473の金融機関と連携。ネット口座振替に対応するほぼすべてを網羅しています。また後者に関しても、口座登録結果情報を自治体へLGWAN環境で還元する仕組みであり、ここを評価する自治体は多いです。
ある導入自治体での実績を見ると、口座振替申し込みのうち、70%以上がWebでの登録に移行しています。利便性向上の効果によって、導入後わずか1年で、口座振替率が約3%向上したという声も届いています。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
口座振替登録のWeb化は、住民の利便性向上はもとより、庁内業務の効率化や徴収率の向上にもつなげられる有効な施策です。当社では、時代に合った行政サービスを実現するための支援と、継続的な改善・改良にも力を入れていきます。ぜひお問い合わせください。
長田 早紀 (おさだ さき) プロフィール
平成4年、東京都生まれ。専修大学卒業後、保険会社で営業経験を積んだのち、平成31年にヤマトシステム開発株式会社へ入社。おもに自治体向けサービスに従事している。
ヤマトシステム開発株式会社
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