神奈川県平塚市の取り組み
窓口における申請書作成の自動化
マイナンバーカードの更新申請を「書かない×迅速な」窓口で対応
平塚市 企画政策部 マイナンバー推進課 課長 岡﨑 肇
※下記は自治体通信 Vol.40(2022年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
「令和4年度末までのほぼ全国民への普及」を目指し、全国の自治体は今、マイナンバーカードの交付事業に力を入れている。しかし、交付が一段落した後も、その更新業務は断続的に発生するため、窓口における職員の負担増大が予想される。そうしたなか、平塚市(神奈川県)では、更新業務における申請書作成の工程を見直し、業務効率化と住民サービスの向上を同時に実現した。取り組みの詳細を、同市担当の岡﨑氏に聞いた。
[平塚市] ■人口:25万7,503人(令和4年6月1日現在) ■世帯数:11万4,165世帯(令和4年6月1日現在) ■予算規模:2,064億円(令和4年度当初) ■面積:67.88km2 ■概要:神奈川県中央南部に位置する、湘南エリアの中核都市。古くから東海道の宿場町として栄え、戦後は商工業の成長とともに住宅地としても発展してきた。海・川・丘陵など豊かな自然と温和な気候に恵まれており、都内主要駅への直通線が複数通るなど交通の便も良好なため、近年はファミリー層などからも注目度が高い。
手書きによる申請手続きは、住民と職員双方の負担になる
―マイナンバーカードの交付に関して、平塚市ではどのような取り組みを行ってきましたか。
当市が独自に開発した「交付管理システム」を活用し、業務効率化を図りながらマイナンバーカードの普及促進に努めてきました。その後、令和2年には自治体向けソフトウェアの開発を手がける行政システム社と協働し、交付管理システムの機能強化や、住民がマイナンバーカードをスムーズに取得できる体制構築を進めてきました。そうしたなかで当市のマイナンバーカード普及率は順調に向上しましたが、カードに搭載されている「電子証明書」の更新業務には、改善の余地があると感じていました。
―どういうことでしょう。
この更新業務は、住民がマイナンバーカードを取得してから約5年後に行う必要があります。更新のための申請書は住民に手書きで作成してもらっていたため、住民は家族のぶんをまとめて申請する際などに大きな手間がかかっていました。また、申請書に書き損じがあれば対応する職員にも負担が生じます。マイナンバーカード取得者数の増加に伴い、電子証明書の更新は今後急増すると予想できたため、その対策を講じる必要があったのです。そこで当市は、「書かない窓口」を解決策とする案を行政システム社にもちかけ、それを具現化する仕組みとして『マイナピット』というシステムを令和3年秋に導入しました。
―どのように「書かない窓口」を実現するのですか。
マイナンバーカードに記録された氏名、住所、生年月日、性別の「基本4情報」を端末で読み取ると、それらの情報が申請書に自動印字されるのです。住民は、マイナンバーカードを端末にかざし、申請する項目をタッチパネルで選ぶだけで済むため、手書きの手間がいっさいかからず、かつ迅速に申請を行えます。身体障がい者の方々や外国人といった手書きの負担が大きい住民も使いやすいシステムだと当市は評価しています。
導入後は、職員も業務効率化につながるメリットを感じています。
手書き由来の記入ミスを防ぎ、職員の業務効率化も実現
―具体的にどういったメリットを感じていますか。
システムが、申請に必要な情報をマイナンバーカードから正確に自動で読み取るため、申請書の記入ミスがなくなり、結果として、職員は手続きをスムーズに進められるようになりました。またこのシステムは、申請書の作成工程のみを自動化するシンプルな仕組みのため、手続きに伴う業務フローやその他の業務システムを見直す必要がない点も評価しています。
―今後の活用方針を聞かせてください。
簡単に基本4情報を読み込める『マイナピット』は、さまざまな証明書の発行申請業務にも活用できそうです。今後は幅広い部署で「書かない窓口」を実現し、「市役所にマイナンバーカードを持参すれば、あらゆる手続きを簡単に行える」と住民に実感してもらえる体制をつくっていきたいですね。
支援企業の視点
窓口対応の効率化を図り、急増する更新業務に今から備えよ
行政システム株式会社 マイナンバー プロジェクトチーム 営業リーダ 横山 正樹
―自治体におけるマイナンバーカードの電子証明書更新業務の現状を教えてください。
マイナンバーカードの交付開始から5年が経過した令和3年度から、徐々に発生し始めています。今、この業務に負担を感じている自治体は多くないと思われますが、令和6年末以降、更新業務は一気に増加する見込みです。さらにその約5年後にはカード本体の更新業務も発生します。そのため自治体は、今後断続的に訪れるこれら更新業務のピークを見据え、今から備えておく必要があるでしょう。
―どうすればよいですか。
「書かない窓口」の実現は、職員の業務効率化と住民サービスの向上を同時に図れる、有効な対策となります。たとえば当社では、カードを読み取るだけで申請書を作成できる『マイナピット』を提供しています。ネットワーク接続やサーバ設置が不要で、電源を入れるだけですぐに利用を始められるのが特徴です。端末の両面にディスプレイを搭載しているため、窓口を挟んで職員が住民の申請手続きをサポートしやすい点も導入自治体から評価されています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
マイナンバーカードに関する業務の効率化を幅広く提案していきたいですね。当社では、カードの交付管理や交付予約を効率化する『Probono』シリーズを提供しています。なかでも「交付管理システム」は平塚市と共同開発したもので、現場視点に立った設計が強みです。関心のある自治体のみなさんは、ぜひご連絡ください。
横山 正樹 (よこやま まさき) プロフィール
昭和52年、兵庫県生まれ。平成12年に流通科学大学を卒業後、行政システム株式会社に入社。令和3年より現職。おもに自治体窓口業務の改善提案を担う。