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先進事例2022.11.24
連載「大阪発 公民連携のつくり方」第17回

「三方よし」となる公民連携で、企業にも市民にも選ばれるまちに

「三方よし」となる公民連携で、企業にも市民にも選ばれるまちに

大阪府公民戦略連携デスク

連載「大阪発 公民連携のつくり方」第17回

「三方よし」となる公民連携で、企業にも市民にも選ばれるまちに

八尾市長 大松 桂右

※下記は自治体通信 Vol.44(2022年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


複雑化、多様化する社会課題の解決を掲げ、大阪府では公民連携の促進を目的に、一元的な窓口機能「公民戦略連携デスク」を設置している。このような専門部署を設けて公民連携を強化する動きは、府内の各自治体にも広がっている。連載第17回目となる今回は、令和3年4月に公民連携の専門窓口として「広報・公民連携課 公民連携係」を設置した八尾市を取材。公民連携に対する考え方や取り組みの成果などについて、市長の大松氏と同市担当者に話を聞いた。

[八尾市] ■人口:26万2,371人(令和4年9月末日現在) ■世帯数:12万7,227世帯(令和4年9月末日現在) ■予算規模:2,268億8,373万1,000円(令和4年度当初) ■面積:41.72km2 ■概要:大阪府の中央部東寄りに位置し、西側は大阪市に接する。大阪市近郊でありながら、豊かな自然や古墳などの歴史遺産に囲まれている。河内音頭などの伝統文化とともに、中小事業者約3,000社のものづくり企業が集積し、高い技術力と製品開発力を誇る。
八尾市長
大松 桂右 だいまつ けいすけ

企業の支援もあり実現した、100を超す新型コロナ対策

―八尾市が公民連携の専門窓口を設置した経緯を教えてください。

 当市では、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染症拡大で社会が大きく混乱していたなかでも、市内の多くの企業から「新型コロナ対策の役に立ちたい」といったありがたい申し出をいただきました。そのおかげもあり、「市民への優先的なマスク購入券の全戸配布」など100を超す新型コロナ対策の独自事業を実現できました。この実績をもとに、新型コロナ対策以外でも公民連携の取り組みを広げ、強化すべきと考え、令和3年4月に「広報・公民連携課 公民連携係(通称:公民連携デスク)」を設置しました。

―専門窓口の設置以降、どのような成果があがっていますか。

 令和4年8月時点で、6社・4大学と包括連携協定を締結しています。なかでも、第一生命保険と明治安田生命保険の2社と進めている取り組みでは、市民一人ひとりに接する保険外交員が、市政情報の提供や日常的な困りごとを把握できる仕組みをつくりました。それはまさに、市民サービス向上に向けた「生の声」を聞けるまたとない機会であり、そこから、たとえば、「市民の健康増進とポイント事業を組み合わせ、市内の事業者と進めてはどうか」といった、公民連携の新たなアイデアが庁内で生まれています。

―公民連携を、今後のまちづくりにどう活かしていきますか。

 充実した市民サービスの提供に向けて、公民連携の推進は不可欠であり、市の窓口として企業と最初に接点を持つ「公民連携デスク」の重要性は今後さらに高まります。公民連携の取り組みを持続可能なものとするために、企業には社会貢献だけでなく、ビジネスチャンスの拡大といった形でも、積極的に当市のフィールドを活用してもらいたいです。

 企業、市民、行政の「三方よし」ですべての市民に光があたる当市ならではの公民連携で、企業にも市民にも選んでもらえるまちづくりを進めていきます。


顔を合わせて聞く市民の声を、施策に反映していく市へ

八尾市 政策企画部 広報・公民連携課 参事(公民連携担当)  藤木 得

八尾市「公民連携デスク」は昨年12月、第一生命保険と明治安田生命保険の両社と包括連携協定を結び、「広報・広聴機能の強化」の取り組みを進めている。公民連携デスクの藤木氏は、この取り組みに対して、「市民の声を反映した市民サービス提供の土台になる」と期待を寄せる。取り組みの詳細について、同氏に聞いた。

八尾市
政策企画部 広報・公民連携課 参事(公民連携担当)
藤木 得 ふじき さとる

市民の自宅を直接訪問し、広報・広聴機能を強化

―両社と締結した連携協定の内容を教えてください。

 「健康増進」「地域活性化」など幅広いテーマで連携し、市民サービス向上を進める内容で、なかでもいま積極的に取り組んでいるのが「広報・広聴機能の強化」です。具体的には、両社の保険外交員が契約者や見込み顧客の自宅を訪問する際、当市の新たな施策や市民サービスの内容をフェイス・トゥ・フェイスで広報してもらいます。その際、日常生活の困りごとや市への要望も同時にヒアリングしてもらい、その内容を私たちにフィードバックしてもらう仕組みです。「市政情報を市民にしっかり届け、市民の意見を市政に反映させる」といった好循環が生まれる土台になる取り組みだと思います。

―実際にどのような成果があがっていますか。

 たとえば、「新型コロナウイルスに関する情報がわかりにくい」といった意見が多いというフィードバックがあったため、ワクチン接種勧奨などは企業とも連携して行い、市民にわかりやすく伝わる広報へと改善しました。ほかにも多くの意見をいただいており、積極的に市民サービス向上のための施策へ反映していく方針です。私たちは毎月1回、両社の朝礼に特別参加するなどして、「市民からどのような意見が寄せられたか」といった情報交換を重ねています。協定締結後も企業と密接にコミュニケーションを取ることで、お互い良好なパートナーシップを構築できているのだと考えています。

―今後、両社との取り組みをどのように進めていきますか。

 当市では令和4年度から、「健康まちづくり計画」をスタートさせています。保険事業に紐づき、健康に関する豊富な知識も持ち合わせている両社の保険外交員とともに、健康増進に向けた広報・広聴も積極的に進めます。両社にとっては、社会貢献の要素だけでなく、営業活動にもプラスの効果が生まれると期待できます。公民連携の取り組みを持続可能なものにするために、新たな価値を創造し、企業、市民、行政の「三方よし」を実現するまちづくりを目指します。


支援企業の視点

市との相互理解を深めるうえで、「公民連携デスク」は重要な存在

第一生命保険 布施支社 支社長 峯野 敬子
第一生命保険
布施支社 支社長
峯野 敬子 みねの けいこ

 当社は、「安心の先にある幸せへ」というビジョンのもと、生命保険事業の枠を越えて、地域に密着しながら一人ひとりのQOL向上に貢献したいという強い想いがあります。そのためにも、現在行っている広報・広聴の強化に関する八尾市との取り組みは、市民の悩みを市に届け、その改善をサポートできる有意義な活動だと思っています。さらに今後は、健康、教育、環境などさまざまな分野で、市民の悩みを解決していく具体的な取り組みを公民連携で行っていく方針です。

 そのためには、当社と八尾市の担当各部署との間で相互理解を深めることが必要であり、その「橋渡し役」となってくれる「公民連携デスク」は、非常に重要な存在だと考えています。


情報をつねに共有できるため、公民連携をスムーズに推進できる

明治安田生命保険 大阪南支社 支社長 田辺 義之
明治安田生命保険
大阪南支社 支社長
田辺 義之 たなべ よしゆき

 当社は令和2年に、「みんなの健活プロジェクト」「地元の元気プロジェクト」といった、持続可能な健康づくり、地域づくりを支援する2つの大きなプロジェクトを社内に立ち上げました。そこでは、「保険+α」の価値提供を目指しています。その実現に向けて、当社では精力的に自治体と包括連携協定を締結し、新たな価値創造に向けた取り組みを進めています。その数は、令和4年3月末時点で全国788自治体にのぼります。

 なかでも八尾市は、窓口となる「公民連携デスク」の働きのおかげで、市の施策や市が抱える課題といった情報をつねに共有できるため、公民連携をスムーズに推進できます。さらに、民間の私たちも驚くほどのスピーディな対応は、「頼もしさ」を感じますね。


大阪府公民戦略連携デスクの視点

公民連携の促進だけでなく、「広報強化」の取り組みにも注目

 八尾市では、コロナ禍のなか、100を超える新型コロナ対策事業を実施してきました。そのなかでは、それぞれの事業を「広報」する難しさも感じていたようです。「公民連携デスク」は、公民連携の促進とともに、広報機能強化の狙いもあり設置されました。「伝える」から「伝わる」を重視した広報に取り組み、情報が「伝わる」ことで、市民や企業からの施策に対する反響も大きくなったと聞きます。

 また同デスクは、連携する企業や大学とコミュニケーションを積極的に取り、「顔の見える関係」の構築を心がけています。このことは、公民連携の取り組みをスムーズに推進する要因になると、高く評価できます。

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