※下記は自治体通信 Vol.60(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体の職員は日々、住民生活の維持・向上を図るべく、業務に取り組んでいる。そうした日常でもらう住民からの「感謝の言葉」は、職員にとって励みとなり、ときには、業務の本質に改めて気づかせてくれるヒントにもなる。とはいえ、実際に住民から感謝の言葉をもらえる機会はそう多くはないに違いない。そこで本連載では、住民から感謝の言葉を受けた自治体職員をクローズアップ。エピソードを通じて、職員たちの誇るべき仕事ぶりを紹介する。
母親のような安心感を得られる、そんな接し方を今後も心がけます
―感謝の言葉を伝えられた経緯を教えてください。
私は地域活力創造課が発足した平成25年当初から、この課で移住相談や、住宅取得などに対する助成、就農・就業支援などの相談を受けています。感謝の言葉を伝えてくれたその女性は、ある移住者同士のイベントで、私のことを「豊後高田のお母さんなんです」と、まわりの人たちに紹介してくれたんです。彼女は、移住してすでに10年以上が経ち、こちらでの生活にはすっかり馴染んでいたので、そのころ私が特別なにかを手伝っていたわけではありません。しかし、「大塚さんがいるから豊後高田に住もうと決めたんです」とまで言ってくれたので、びっくりしました。
―感謝の言葉を伝えられたのはなぜだと思いますか。
その女性は、「ビジネスに関することからプライベートまで、いろんなことの相談に乗ってもらい、心強く感じたから」と話していました。私は普段、相手からの相談を受けて市の支援制度を提案するだけでなく、移住者が豊後高田での新生活を不安なく送れるよう、相手に寄り添い接することを心がけています。その女性にも、住まいの手配や事業の立ち上げが済んだ後もときどき会いに行き、「仕事は順調なのか」、「地域の人たちとの関係はうまくいっているか」と、気にかけていたんです。そんな私の姿が、子どものことをなんでも気にかけてしまう「お母さん」のように映ったのかもしれません。
―感謝の言葉をどのように受け止めましたか。
「母親のような」とはどのような存在なのか、自分の仕事に当てはめて考えてみました。移住者のみなさんは、はじめは私たち市の職員と何度となく顔を合わせる機会があります。しかし、生活の基盤がある程度整うと、子が成長して親元を離れていくように、移住者は行政のサポートを必要としなくなっていきます。そうした状態こそ、本来は移住者にとっていちばん望ましいことではありますが、なかには彼女のように「豊後高田の市役所には自分を支えてくれる職員さんがいる」と、いつまでもその職員のことを覚えていてくれる人もいます。これからも、相手が自分たちに母親のような身近さを感じ、安心感を持ってもらえるよう住民と接していきたいと思いました。
『自治体通信』では、自治体職員のみなさんが住民に感謝されたエピソードを募集しています。
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jt_editorialdept@ishin1853.co.jp 『自治体通信』編集部