民間企業の取り組み
オンライン申請の推進
行政デジタル化の成功に、段階的な導入が欠かせない理由
株式会社グラファー 行政支援本部 及川 涼介
デジタル庁が創設されるにあたり、デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)に取り組む自治体は多い。行政のデジタル化を支援しているグラファーの及川氏は、「特に行政手続きのデジタル化に取り組む自治体は急速に増えている」と話す。同氏に、行政デジタル化の状況や、取り組む際のポイントなどを聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
マイナンバーカードの普及で、オンライン化は進む
―自治体における手続きのデジタル化は、これからさらに進んでいくのでしょうか。
デジタル化は、さらに進むと考えられます。
令和3年6月1日時点で、マイナンバーカードの交付枚数率は、全国で31.8%です。これは、ほぼ3人にひとりが、すでにマイナンバーカードを保有している計算です。現在も交付枚数は増加しており、今後はマイナンバーカードを利用したオンライン申請の導入が、さらに進みやすくなると考えられます。
―これからデジタル化に取りかかる自治体は、どのように進めていけばよいですか。
まずは、小さな範囲で始めることを推奨します。オンライン申請を導入しやすい手続きから試してみて、問題がなければ、デジタル化の範囲を広げていく、といったイメージです。
たとえば、「転出届」をオンライン化して、それがうまくいったら、窓口予約のデジタル化に取り組んでいったり、「犬の登録」や「水道の開始届」といったほかの手続きもオンライン化していったり、段階的に拡大していくのです。
―段階的に導入することは、自治体にどのようなメリットがあるのでしょうか。
段階的に導入することで、問題が発生しないかどうかを試験的に確認できるメリットがあります。
はじめから大きな範囲で一気に導入を進めていった場合、問題が起きた際の影響が、多くの住民や職員におよびます。そのため、できるだけ小さな範囲で使ってみて、実際にどのような影響が生じるのかを慎重に確認しながら進めていく。そうすることで、行政手続きのデジタル化をより成功しやすくできます。
スマートフォンだけで、完結するオンライン申請
―グラファーではどのようなサービスを提供しているのですか。
あらゆる行政手続きを、スマートフォンで完結できるオンライン申請サービス『グラファー スマート申請』を提供しています。マイナンバーカードを使った本人確認や、キャッシュレスでの手数料支払い機能を備え、住民にとって使い勝手のよいオンライン申請が構築できます。
全庁的な電子申請システムとしても利用できますし、たとえば、「転出届」や「学童保育のオンライン申し込み」といった特定の手続きだけをオンライン化したい場合にも活用できます。そのため、段階的な導入を進めていただくことができるのです。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
引き続き、DXの実現を目指す自治体をサポートしていきたいと考えています。
『グラファー スマート申請』は、さまざまな手続きをオンライン化できるSaaS*1型のサービスです。SaaSの特徴として、独自システムを構築する方法と比較した場合、短期間で安価に構築できるという点があります。
まずは小さな範囲から使ってみて、少しずつその範囲を広げていくといった使い方もできるので、各自治体の状況にあわせてDXを推進していくのに役立ちます。「デジタル化に取り組んでいきたいが、なにから進めていけばよいかわからない」と考えている方は、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。
及川 涼介 (おいかわ りょうすけ) プロフィール
神奈川県生まれ。大学卒業後に総務省入省。岩手県庁への出向後、マイナンバー制度に関する法令整備などを経験。株式会社グラファーでは、行政支援本部にて複数の自治体での行政デジタル化プロジェクトに従事。職務外では、シビックテック活動に取り組んでいる。
株式会社グラファー
設立 |
平成29年7月 |
資本金 |
17億4,939万5,865円(資本準備金を含む) |
従業員数 |
52人 |
事業内容 |
行政インターフェース事業、行政ソリューション事業、データプラットフォーム事業、マーケティングソリューション事業 |
URL |
https://graffer.jp/ |
お問い合わせ電話番号 |
03-3405-7007 (平日10:00〜17:00) |
お問い合わせメールアドレス |
supportgov@graffer.jp |
活用自治体の声
『グラファー スマート申請』を使い「転出届のオンライン申請」を開始
つくば市 市民部 市民窓口課 主査 西村 孝之
[つくば市] ■人口:24万8,578人(令和3年6月1日現在) ■世帯数:11万2,980世帯(令和3年6月1日現在) ■予算規模:1,495億1,282万8,000円(令和3年度当初) ■面積:283.72km2 ■概要:茨城県の南西部に位置し、県庁所在地の水戸市から南西に約50㎞、首都東京から北東に約50㎞、成田国際空港から北西に約40㎞の距離にある。北に関東の名峰筑波山を擁し、東には国内第2位の面積を有する霞ヶ浦を控え、あわせて水郷筑波国定公園に指定されている。日本を代表する研究学園都市であり、緑豊かな自然と、都会的な生活を同時に享受できる魅力的なまちづくりが進んでいる。
当市では、スマートフォンから「いつでも・どこでも」申請が可能な行政手続きを実現するため、令和3年2月に『グラファー スマート申請』を導入し、「転出届のオンライン申請」を開始しました。市民は、自宅にいながらスマートフォンで転出手続きを行うことができます。サービスを開始して間もないながら、住民異動が繁忙となる3月は、転出届のうち約1割がオンライン申請でした。
市民からは、「土日、祝日に関係なく、オンラインで手続きができるため、すごく便利」「自宅で空いた時間にできるのが非常に助かった」「コロナ禍のため、年度末で混雑しそうな役所に行かなくてすむのはありがたい」といった声が聞かれるなど、好評です。
現在は、住民票の写しと、印鑑証明書の交付請求のオンライン化にも取り組んでいます。引き続き『グラファー スマート申請』を活用して、行政手続きのオンライン化を拡充していきます。