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東京都府中市の取り組み
先進事例2024.10.25

民間の創意工夫で実現に向かう、公園を起点にした「緑のまちづくり」

[提供] 株式会社かたばみ
民間の創意工夫で実現に向かう、公園を起点にした「緑のまちづくり」
この記事の配信元
株式会社かたばみ
株式会社かたばみ

※下記は自治体通信 Vol.61(2024年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「地域経営」を担う自治体にとって、地域ににぎわいをもたらし、住民生活の質的向上につなげるための施策の推進は、もっとも基本的な役割の1つであろう。その手法はさまざまにあるが、府中市(東京都)では、地域に点在する市立公園を「にぎわい創出の拠点」と位置づけ、民間ノウハウを活用してその管理を効率化するとともに、利活用促進をも図る取り組みを進めている。同市の担当者2人に、取り組みの経緯とその効果について詳しく聞いた。

[府中市] ■人口:26万989人(令和6年9月1日現在) ■世帯数:13万1,279世帯(令和6年9月1日現在) ■予算規模:2,737億8,188万1,000円(令和6年度当初) ■面積:29.43km² ■概要:東京都のほぼ中央に位置し、新宿から西方約22kmの距離にある。遠く大化の改新後、武蔵国の国府が置かれ、江戸時代は宿場町として栄えた。そのため市内には歴史ある寺社や旧跡などが多く残り、くらやみ祭に代表されるさまざまな伝統行事が継承されている。また、多摩川や湧水、武蔵野の面影をたたえる浅間山など豊かな自然に恵まれ、おとなも子どもも楽しめるレジャースポットも充実している。
インタビュー
江内田 直樹
府中市
都市整備部 公園緑地課 課長補佐
江内田 直樹えないだ なおき
インタビュー
須田 茂也
府中市
教育部 学務保健課 課長
須田 茂也すだ しげや

これまで以上に重要になる「公園経営」の視点

―公園管理に民間ノウハウを導入した背景を教えてください。

須田 私が公園緑地課の在籍時に導入したのですが、当市には約370の市立公園があり、これらの緑はまちの景観を彩り、豊かな住環境を形成する貴重な資産となってきました。当市では、これらの資産を活かし、「緑のまちづくり」の計画的推進に向けた「府中市緑の基本計画2020」を令和2年に発表しましたが、計画策定の過程では、目指すべき公園管理の在り方について議論を重ねてきました。

―どのような議論でしょう。

須田 昨今の社会情勢の変化や市民の利用ニーズの多様化を受け、公園に求められる役割や提供すべきサービスが変わってきています。そうした情勢を踏まえ、従来「つくり、守る」ことに重きを置かれていた公園管理に対して、これからは公園という資産を「育て、いかす」視点、いわゆる「公園経営」の視点が重要との認識が確認されました。この公園経営の取り組みでは、大きく2つの軸があります。1つは市民や事業者のニーズを考慮し、これまで以上に「質の高い維持管理」を実現すること。そしてもう1つが、公園を「にぎわい創出」の拠点と位置づけ、さらなる利用促進を図ることでした。その実現に向けて当市が実行したのが、一部公園の管理を市直営から指定管理者制度へと移行し、民間ノウハウを活用することでした。

―どのような観点から事業者選定を進めたのですか。

須田 従来、市が行っていた清掃、剪定、修繕のほか、施設・遊具などの予防保全といった公園の維持管理業務を高い品質で包括的に行うこと。同時に、利活用促進に向けたイベント開催などの魅力ある自主事業の提案も条件とし、プロポーザルを行い、「キャピタル・かたばみ共同企業体*」を選定しました。今回は試行的に68公園を対象とし、期間は令和5年4月からの5年間に定めて事業を開始しました。

*キャピタル・かたばみ共同企業体 : 「株式会社キャピタルグリーン(代表構成企業)」と「株式会社かたばみ(一般構成企業)」を構成団体とする共同企業体

市が志向する「コミュニティガーデン」へ

―どういう効果が表れていますか。

江内田 維持管理業務は、これまでの水準がしっかり守られたうえで、利活用促進の多彩な自主事業が実施されており、市民にも好評です。市立公園の中で基幹公園と位置づけられる「府中公園」では、月に1回のペースで、木の枝を使ったブランコや自然の傾斜を利用したすべり台などがある「プレーパーク」という遊び場をつくっています。民間ならではの企画力で幅広い世代の市民が参加できる工夫が施され、常時100人以上の市民が集まっています。また、近隣の保育園に声を掛けて、公園内の花壇に花を植えてもらったり、清掃活動に参加してもらったりしています。そこでは、市が取り組む、公園の花壇のお手入れを通じて地域の交流を進める「コミュニティガーデン(地域の庭)」についても、ともに推進しています。

―今後の公園運営に対するビジョンを聞かせてください。

江内田 引き続き、「市民協働」の視点を大切にしながら、今後は図書館など近隣の公共施設や高齢者施設、幼稚園・保育園などとの連携も深め、子育て支援や福祉にも波及する「地域交流の場」として公園を機能させていきたいです。そして、それらの成果を市内のほかの公園にも適用できるよう、成果の検証とともに委託方法を研究しながら、公園管理のさらなる官民連携を検討していきます。

支援企業の視点
「にぎわい創出」を生む維持管理で、公園の「価値」は高められる

ここまで紹介した府中市の取り組みを支援しているのが「キャピタル・かたばみ共同企業体」である。ここでは、同企業体の吉野氏に、「にぎわい創出の拠点」となる公園管理の在り方について詳しく聞いた。

インタビュー
吉野 想
キャピタル・ かたばみ共同企業体
吉野 想よしの そう
令和2年、かたばみ興業株式会社(現:株式会社かたばみ)に入社。おもに指定管理業務を担当する。令和5年から現職。

公園にある「ポテンシャル」の活かし方に課題を持つ自治体

―域内の公園管理に課題を抱える自治体は増えていますか。

 そうですね。これまでの公園管理は、「整備・維持」に重点が置かれていましたが、最近はいかに住民の「利活用」を促すかについて模索する自治体が増えています。というのも、社会環境の変化や住民ニーズの多様化を受け、公園にはスポーツや散策の場以外に、「都市環境の改善」「生態系保全」「防災力向上」など、昨今じつに多くの役割が求められています。本来、多くの住民が利用し、楽しめる空間であり、それだけのポテンシャルがあるのですが、それをどのように活かせばいいのかわからず、課題に感じている自治体も少なくないかと思います。

―どうすればいいのでしょうか。

 「まちづくり」の一環として公園管理を位置づけたうえで、住民や事業者、周辺施設との連携のなかで利活用を促せる魅力的な公園をつくる、「公園運営」の発想が必要です。そのためにはまず、「質の高い維持管理」が条件です。遊具などの日常的な点検や植栽の管理、清掃を適切かつ効率的に行い、安心・安全に利用できる環境を整備することは、大前提だと考えています。そのうえで取り組むべきは、「人が集まる仕掛け」をつくることです。従来とは異なるこうした発想を取り込んだ公園管理には、我々のような民間の専門会社が持つノウハウを活用することが有効です。

―どのようなサービスを提供しているのでしょう。

 植栽管理から施設点検、塵芥処理にいたるまで、指定管理者制度では、自治体の代行者として公園管理業務のすべてを担います。域内すべての公園を包括的に管理するため、人員の最適配置や業務効率化により従来に比べ低コストで業務品質の安定化を図れます。加えて、システムによる管理情報の一元化で、公園の現状や住民のニーズをまとめて把握し、安全管理、住民サービスの向上に活かします。この管理情報をもとに包括的な整備・修繕計画を策定するため、長期的視点による保全管理計画の実行が可能になります。こうした包括化による管理業務の改善を基本に、利活用を促し、公園自体の価値を高める施策もあわせて行うのが、「公園運営」の考え方であり、我々のサービスの特徴です。

―具体的にどういった施策を行うのですか。

 公園で、市民協働の活動をサポートしたり、各種イベントを企画・開催したりするなど、公園の利活用促進に向けた自主事業を行います。それぞれの地域のニーズに合わせた企画を立てるようにしており、たとえば府中市では、「プレーパーク」「自然遊び」「寄せ植え体験」といった内容のイベントを適宜開催しています。そこでは、地元NPOやシルバー人材センター、近隣の方々などにも運営に協力してもらい、地域コミュニティが活性化する視点を大事にしています。

「交流」から見つかる、課題解決に向けたヒント

― 単にイベントを開催するだけではないと。

 はい。地域のさまざまな人が集い、垣根を越えた交流が生まれれば、公園の利活用を起点に、「教育」「子育て」「福祉」「防災」など、地域が抱えるさまざまな課題を解決するためのヒントが見つかると期待できます。我々は、こうした「にぎわい創出の拠点」づくりを目指した公園運営を通じて、公園が持つポテンシャルを最大限に引き出し、公園自体の価値そのものを高めたいと考えています。

―府中市に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 「キャピタル・かたばみ共同企業体」では、指定管理者制度による包括的な管理を手がけています。市内企業であるキャピタルグリーン社の「地元力」と、かたばみ社の持つノウハウを掛け合わせることにより、今後も地域の活性化へ貢献していきます。

株式会社キャピタルグリーン

設立/平成2年 資本金/2,000万円 売上高/3億8,469万円(令和5年10月期) 従業員数/15人(令和6年5月現在) 事業内容/緑化・造園ノ施工、管理

専門事業者からひと言
グループの総合力を活かし、一気通貫のPark-PFIも可能
インタビュー
竹部 咲良
株式会社かたばみ
緑化造園本部 営業部 PP-X推進課
竹部 咲良たけべ さくら
令和4年、かたばみ興業株式会社(現:株式会社かたばみ)に入社。おもにPPP関連の営業を担当する。令和6年から現職。

 私たち「かたばみ社」は、域外から人を呼び込めるような大規模な公園整備での活用が多いPark-PFI*によって事業を推進するノウハウも持ち合わせています。実際に、Park-PFIと指定管理者制度を組み合わせた「いろは親水公園整備・管理運営事業」(埼玉県志木市)では、当社が代表企業を務めるコンソーシアムが事業者に認定され、当社は整備ならびに管理運営をメインに手掛けています。なお、Park-PFIには、設計、施工、ランドスケープデザイン、プロモーションなどあらゆる業務が必要となります。その点、当社が所属する鹿島グループには、Park-PFIに必要な機能を持つ企業がそろっており、一気通貫で事業を実施できる強みもあります。

*Park-PFI : 「飲食店などの収益施設の設置」と、「当該施設から生じる収益を活用した公園内の施設整備」を一体的に行う事業者を選定する制度

株式会社かたばみ
株式会社かたばみ
設立

昭和16年5月

資本金

1億円

売上高

49億400万円(令和6年3月期)

従業員数

154人(令和6年9月1日現在)

事業内容

緑化・造園の設計・監理、施工、管理、コンサルティング/建築ならびに土木工事の設計・監理、施工/公園、緑地等におけるPPP/PFI事業など

URL

https://www.katabami.co.jp/

お問い合わせ先
03-5413-8111(平日 8:30~17:15)
info@katabami.co.jp
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