【スマートシティ・アプリ】「フェーズフリー」の公式ポータルが、市の発展を導く基幹インフラに
(EYE-Portal / NTTデータ関西)


※下記は自治体通信 Vol.64(2025年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
デジタル技術を活用して、住民サービスの利便性をいかに高めるか。今すべての自治体に課せられた命題と言っても過言ではないだろう。そうしたなか、仙台市(宮城県)では昨年3月に、公式ポータルサービス「SENDAIポータル」を開設し、生活情報の発信や各種オンライン手続きの窓口としての運用を開始した。今後は産学官が連携し、各種サービスを提供する共通基盤として発展的な機能強化を構想しているという。同市担当者に開設の経緯と今後のビジョンを聞いた。

防災情報の発信を「日常生活に織り込む」
―公式ポータルサービスを開設した経緯について教えてください。
平成23年に東日本大震災を経験した当市ではこれまで、国際的な防災指針「仙台防災枠組」の採択都市として、「防災環境都市」づくりに力を入れてきました。そういった背景から、当該ポータルサービスの開設にあたり、これまでの知見を活かし、災害への備えや情報発信を「日常生活に織り込む」という理念を重要視しました。市民や来街者が日常と災害時(非日常)の区別なく、必要な情報や行政サービス、避難情報などにアクセスできる安全・安心な共通インターフェースがまちづくりの基本となる。そう考えて発想したのが、「SENDAIポータル」です。
一方で、震災から10年以上が経過し、復興から発展へのステージに入ったいま、大学や民間企業などとのさらなる連携強化が必要との問題意識もありました。そこで「SENDAIポータル」では、「データ連携基盤」と接続し、産学官が連携して官民さまざまなサービスを提供するための情報プラットフォームへと発展させる構想を描いています。いわば、安全・安心と賑わいを両立できるまちづくりの基幹インフラに育てたいと考えています。
―ポータルサービスの開発はどのように進めたのでしょう。
開発にあたって重視したのは2つのポイントでした。1つは防災情報を「日常生活に織り込む」という理念を実現するために、「フェーズフリー」という設計思想を体現することです。日常時はもちろん、非日常時にも役立つようにモノやサービスをデザインするというこの設計思想を、いかに効果的にわかりやすく表現するかがポイントでした。もう1つは、日常的に使ってもらうサービスであるため、直感的にわかりやすいこと。この2つのポイントを重視して、開発委託事業者を選定する公募型プロポーザルを実施し、さまざまな企業の応募のなかから、NTTデータ関西が提供する『EYE-Portal』を基盤として選定しました。
「産学官金労言」の連携で、ウェルビーイング向上へ
―選定の決め手はなんでしたか。
提案のなかで示された内容のうち、災害時の画面の切り替えがわかりやすく、画面操作も直感的に使いやすく設計されているところが、選定過程で高い評価を得ました。多くの自治体で防災システムの開発を手がけてきた同社の知見が活かされ、災害時に伝えるべき情報の選定や表示方法、UI設計などの優れた提案につながっていたと感じています。『EYE-Portal』が有する「データ連携基盤」との接続性やカスタマイズの柔軟性も評価ポイントでした。さらに同社からは、「来街者にはアプリはダウンロードされない」との想定から、『EYE-Portal』を使ってアプリ版とWeb版の両サービスを開発する提案を受けました。市民と来街者双方の利便性を考え、非常に有効な提案だと評価しました。
―運用後の成果はいかがですか。
開設以降、利用者からのアプリダウンロード数は少しずつですが着実に伸びており、市の情報発信のフロントに立つサービスとして機能が拡充していくことで、より広まっていくのではと感じています。利用者アンケートでは、「スマートフォンから見やすい」との声が届いており、わかりやすさが担保されていると評価しています。今後、より利便性を感じてもらうために、利用者のマイページ機能の実装、さらにはシングルサインオンを活用した民間サービスの提供などもポータル上で展開できる仕組みを構築していく計画です。政府が掲げる「産学官金労言」の連携が生まれる共通のインターフェースとして「SENDAIポータル」を育て、住民のウェルビーイングの向上、さらには魅力あふれるまちづくりにつなげていきたいです。

これまで紹介した仙台市(宮城県)におけるポータルサービス開設の取り組み。これを支援したのがNTTデータ関西である。ここでは同社の正崎氏に、開設意義や取り組みを成功させるためのポイントなどを聞いた。

データ連携によるシナジーが、ポータルの新たな価値を生む
―自治体が独自に地域ポータルを開設する動きは増えていますか。
仙台市のような先進的な取り組みをモデルケースとし、関心を持ち始める自治体が増えていると感じます。自治体が描く最終的な目標は、住民のウェルビーイングの向上です。一方、社会課題は多様化し、住民のニーズもさまざまで、予算や職員など自治体のリソースも限られます。そのなかで地域の資源を最大限活用し、住民の多様なニーズに合わせて行政サービスを届けるには、適切な情報発信の仕組みが重要だと、多くの自治体が感じているのだと思います。
―開設にあたり重要なポイントはなんですか。
各所に散在する数々の行政サービスを体系的に集約し、行政と住民との「タッチポイント」として機能することこそ、ポータルサービスの意義です。ただし、単に行政サービスのリンクだけでは、住民の利便性向上は限定的です。紐づくサービス間で相互にデータ連携が行われ、シナジー効果によっていかに新たな価値を生み出すか。この視点が重要になります。
―詳しく教えてください。
自治体の声を聞くと、ポータルサービスに盛り込みたい機能として、「防災」「電子申請」「健康」のニーズが強いです。そこで防災情報の発信を例とすれば、地震が発生した際、地震情報の発出のみならず、周辺の避難所情報や最短の避難経路なども合わせて共有されれば、適切な避難誘導が可能になります。そのためには、利用者の位置情報、属性情報、周辺の地図情報や地域の交通情報といったさまざまなサービスとの情報連携が必要になります。当社が提供する総合ポータルサービス『EYE-Portal』は、まさにこうした各種サービス間のデータ連携を通じて、地域の情報伝達に新しい価値を創出するソリューションです。
さらにいえば、紐づく個々のサービス自体の充実も、ポータルサービスの利用価値やデータ連携の質を大きく左右しますが、そこでも当社の強みが発揮できます。

「地域に根差したポータルサービス」へ
―他地域のポータルサービスとはどう違うのでしょうか。
当社ではこれまでに、総合防災情報システム『EYE-BOUSAI』や電子申請サービス『e-TUMO』といった行政システムを自治体向けに提供し、いずれもトップクラスの導入実績を誇っています。これら実績のある利便性の高いサービスは、住民のポータルサービス利用促進と同時に、精度の高い連携を実現するデータ取得が可能です。さらに、住民の生活スタイルや属性に合わせた最適な情報発信を可能にするAIの搭載など、NTTデータグループの資産を活かし、地域ポータルの価値を高めるトータル支援ができるのも当社の強みです。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
『EYE-Portal』では、総務省が推奨する「データ連携基盤」をはじめ各種の都市OSとのID連携で、さまざまなサービスをシームレスに受けられる世界を目指します。
すでに各地で導入事例が生まれています。これらの事例から得たノウハウを有効に活用し、豊富な機能と柔軟なカスタマイズで自治体の期待に応え、地域が目指すポータルサービスの実現を支援していきます。


設立 | 平成15年7月(創立/平成2年3月) |
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資本金 | 4億円 |
売上高 | 370億6,900万円(令和5年度実績) |
従業員数 | 1,141人(令和6年4月時点) |
事業内容 | データ通信システムの開発および保守の受託、販売ならびに賃貸/データ通信システムに係るソフトウエアまたは装置の開発および保守の受託、販売ならびに賃貸など |
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